恋するオルランド、1巻冒頭

前々から、シャルルマーニュ伝説の、『恋するオルランド』の翻訳などやってみたいと思っていた。冒頭の1節をやってみる。

かつて、インドよりかなたの地に強大な君主がいたという。その君主はこの上ないほど勇猛で精力的であり、戦(いくさ)において彼に対抗できるものは誰もいなかったという。その君主の名はグラダッソ。竜のごとき容貌と、竜のような心臓を持ち、その姿はまるで巨人のよう。

最も偉大なものが、最も裕福なものとなるのはありがちなことである。そして、そんな者ほど決して手に入らないものを求め、そのために手に入れたもの全てを失うものだ。この君主も、かねてからオルランド(英語風に言えばローラン)の持つ名剣・ドゥリンダナ(英語風に言えばデュランタル)と、リナルド(フランス風に言えば、ルノー・ド・モントーバン)の持つ名馬・バヤールを手に入れたいと熱望していた。これらを手に入れるため、彼はフランスと戦うことうぇお決意する。こうして、15万の騎士を選りすぐり、遠征を始めたのである。

序文って言うのは、それなりに大事なものだ。なのに、序文でシャルルマーニュも、オルランドも出さず、グラダッソが出てくるって、冷静に考えれば意外なものだ。んと、アーサー王伝説で言うならば、序文は聖霊降臨祭(ペンテコンステ)の描写、中国の演義文学なら前王朝の治乱興亡と相場が決まっているものなのだけど。

で、グラダッソといえば、脇役、だよね。これをアーサー王伝説風に言えば、アコロンあたりがエクスかリバー欲しいって言って、戦争吹っかけるようなものです。で、オルランドシャルルマーニュの甥でパラディンの筆頭、リナルドは「キリスト教徒で第二の騎士」というから、オルランドに次ぐ実力の持ち主。円卓の騎士で言うならば、ガウェインとランスロットみたいなものか。興味ある方は、オルランドリナルドについてはウィキあたり読んで下さい。

ホームページで、ガウェイン特集の目次だけ制作しました。あと、『恋するオルランド』は支援あればまじめにやりたい。